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【レビュー】三島屋変調百物語五ノ続 あやかし草紙 第一話「開けずの間」レビュー

宮部 みゆき『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』のネタバレを含む感想・レビューです。変調百物語のシステム、展開の技巧についても紹介しています。

そんなえらそうなものではないですが…

て、待ちに待った「三島屋変調百物語」の電子書籍の刊行が始まり(文庫版のみ) 大人気怪談時代劇シリーズの文庫版最新作「あやかし草紙」。さっそく読んでみました。
これから読み始める人は合本版がおススメです。かなり安くなってます。⇓

三島屋変調百物語とは?

普通の百物語はくらーい夏の夜に幾人かが集まって蝋燭をともし、一つ語り終わるたびにその灯りを消していく。全て消し終わると怪異が起こる、と言われているものです。それに対して「変調百物語」は語りては一人。時は江戸は神田にある袋物屋三島の主人•伊兵衛の姪「おちか」が聞き手となり、客が胸に秘めた怪異を語る、というのが「変調」な設定なのです。

 

●三島屋変調百物語 あやかし草紙は
・シリーズ5作目
・語り手と聞き手は一人(でないこともある
・怖い話もあれば、ほろっとする話もある変幻自在の怪談

それでは5巻目にあたる「あやかし草紙」の感想・レビューを始めたいと思います。

第一話 「開けずの間」

まず、題名がおかしい。「開かず」ではなく「開けず」…。怪しい。と思いつつページをめくっていくのですが、あのー、いきなりなんですが、こういう時代ものってなぜか「おいしいもの」ってよく出てきませんかね。この話でも主人公「おちか」と語り手の「平吉」の前に菓子が置かれます。うまそうな菓子です。引用します。

今日の菓子は扇の形の練り切りと小粒の饅頭だ。中身のこしあんがうっすらと透けて見える白い川は、口に入れると溶けるようだと、近ごろ神田界隈で評判の品である

う、うまそう。饅頭くいたい。という気持ちをおさえつつ考えると
このシリーズすでに5冊目ですが、しょっちゅう菓子、飯モノが出てくるんですね。それはなぜか、とズバリ言うと
「現代」と「江戸時代」の意識つなぐ
ことだと思うのです。つまり読んでいる読者と作中の人物を甘いものでつないでしまおうということなのです。江戸時代の舞台風景は情報としては伝わっても、真に感情移入することは難しいでしょう。しかし「饅頭うまい!」はどうでしょうか。こちらは現在も江戸時代も変わらずにある感情だと思います。そういう感情を起点にして読者と登場人物をぐっと近づけてしまう効能が「甘い物」の描写にはあるわけです。おそらく。

今回の怪異について

いやー、ほんと考えさせられる怪異ですよね。簡単に説明しますと、語り手の家は金物屋(今はもうない…)で両親、7人の子供たちがいました。が長女が嫁ぎ先で義母にいびられて、子供とられて離縁されます。ここが怪異の始まり。子をとられて悲しんだ長女は嫁ぎ先を恨むあまり、願掛けをやたらめっぽうに始めてしまう。しかしそれが叶わないと、ますます恨みをつのらせていきます。するとある日突然、道端で女をかけられる。その女は「行き遭い神」。真っ昼間に神(といっているなにか)に出会うのも怖いですが、この女が願いをかなえてくれるというので、長女はつい家の中にいれてしまうのですが、この神のシステムが「願いをかなえる為になにかを寄越せ」系のやばいやつなのです。

案の定、願いをかなえるたびに家の者が贄として一人づつ亡くなっていくのですが、注目したいのは「何を叶えるために」「だれが」「だれを」差し出したかで、この先は是非読んでいただきたい。一度タガが外れると家族はどうなってしまうのか。なかなかの「嫌怪談」です。

読み終わって

まあ、出てくる怪異が「願いをかなえる代わりに…」系だといやあな展開にしかなりませんよ。でもそれをストレートに書いたら、こんなに長いシリーズにはなりえない、どこかで読者も疲弊しますよね。それがこの「変調百物語」構造によって「物語のつらさ」が軽減されていると改めておもいました。それは
①過去にあった話
②語り手は生きている(逆手にとった話もある
③聞き手は安全(だいたいにおいて
の3つに集約されると思います。
どんなに嫌な話でも「過去に終わった話」である程度の重さも軽減されますし(基本的には)語り手も、聞き手側も無事なのです。この構造によって読者側も本来つらーい話も読後感よく読めることができるのです。(おそらく!

というわけで、まだ5巻の第一話ですが、一旦ここで休憩ということで、また次回第二話「だんまり姫」でお会いしましょう。さようなら。

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