久々に長編小説を読み終わった。その名も『生ける屍』。なんだかMTGのカードみたいな名前だが、サンリオ文庫で長らくウン万円のプレミアがついていた幻の名作だった。それがちくまから復刊されたのが2013年。もちろん俺はそっこうで本屋で買いましたよ。それから棚で寝かし続けること早7年。手に取ってティスティングしてみると豊潤な香りが…。いや、まあとにかく出だしがなんとなく最近観た『テネット』と似ているなあ…、そんなこと思いながら読み始めたんです。全然違いますよ、内容は。でもテネット序盤の意味ありげでなんか謎めいたセリフの応酬が、この『生ける屍』の色んな含みをもたせた感じとすごく似ていたんですよね。
プリニウスはそんな事一切言ってないですが、この世には二種類のサイコーだぜ!という本があって、一方はベタで落ちが分かっているんだけど語り口がサイコーな本、もういっぽうは先の展開がまったく読めない本で、「生ける屍」は断然後者。序盤の謎い展開から、中盤の陰謀渦巻くゴシック展開、からの最終のえ、まじ…着地まで一切油断できない構成です。
個人的は途中で『塩をなめる』だっけかな、まあ特徴的なセリフがあるんですが、それがこの間買った同じちくま文庫の新刊『ブルースなんてただの歌』の冒頭にも『塩をなめる』の記述があって、本の磁場がもつシンクロニシティに震えました。
あとはまあ、とにかく『プリニウス』最高!と言いたくて、何故かというと自分の良きマンガの基準てとにかく「繰り返し読める」ことで、つまりは「鎌倉物語」とか「こち亀」とか「クッキングパパ」とか「レモン・ハート」とかが至上最高のマンガで、まあ、この基準はころころ変わるので明日は「アキラ」が最高!とか言っていると思いますが、「プリニウス」も相当再読耐久度が高い!題材もさることながら、ロードムービーだし、とにかく背景の密度が最高!何度読んでもうっとりする場面があるんですよねえ。
で、問題になるのが、澁澤版『わたしのプリニウス』とマンガ版『プリニウス』どっちから読むか問題なのですが、これは自分がそうだから言うのですが、断然マンガ版から読め!と言いたいです。なぜならば、澁澤版はプリニウスをちょいちょい「この嘘つきめ」「たまに自分の意見を言ってるな…」と言う感じでプリ二ウス下げコメントがけっこうあるので、プリニウスの人生の一端を垣間見るマンガ版の前に読むと、変な先入観が…。まあ、どっちから読んでも結局面白いんでどっちだっていいんですけどね
そう言えば、プリニウスではおなじみ無頭人が、先月のセールで買った講談社学術文庫の『西洋中世奇譚集成 東方の驚異』にも出てきて、博物誌もそうとう後世のアンチョコに使われたなあと感慨深かったです(こなみかん
でも、色々無計画に読んでいると思わぬところでこうやって知識が繋がるので、その瞬間はばよえええええんと気持ちがいいのでおススメです。
そんな感じでまだ次回、再見!